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リッこら

Re:ALL製作委員会は一枚岩ではありません。日々委員どうしが小首を傾げ合いながら 冊子を作っています。彼らは一枚岩というよりはむしろ、ガラクタの山のようです。どんなガラクタが埋まっているのか。とにかく委員それぞれが好きなものを書きたいということで始めたコラム、気が向いたら読んでやって下さい。ひょっとしたら、使えるガラクタがあるかもしれません。

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小足見てから昇龍余裕なら人生イージーモード

自由落下する女の子に魅了されること約三ヶ月。どうもはじめまして。Re:ALL製作委員会の新人運営長卯木です。

このたび当HPにて連載コラムをはじめるということで、デザイン一筋、まともにエディトリアルスタッフとして活動したことが一度もない僕が、僭越ながら先陣を切らせていただく運びとなりました。
見切り発車ではじめたこの企画。きっと僕の文章が金型になるのであろうな、はてどんな文章をどれだけの分量書いたものか、などと頭をこねくり回したのですが、やはり自分の好きなことについてまったくもって主観的に語るのが一番筆も進むであろうという結論に落ち着きました。

さて、みなさん自分の好きなものといったら何を思い浮かべますでしょうか。芸能人やアーティストのような「人」であったり、チョコやパスタのような「食べもの」であったり、はたまたスポーツや音楽のような「趣味」なんてこともあるでしょう。
じゃあ、お前は何が好きなんだと言われれば、それはゲームセンターという「場」なんです。ベストプレイス、というやつですね。

今や落ち目のアミューズメント産業であるとはいえ、ゲームセンターに一度も行ったことがない方はいないでしょう。その時あなたはなにで遊んだでしょうか?プリクラ、メダルゲーム、レースゲーム、ガンシューティングゲーム。一般的にはこんなところでしょうか。もしかするとクイズゲームや音楽ゲームをやったことがある人もいるかもしれませんね。
ですが、ここでお話しするのは「ビデオゲーム(※1)」その中でも「対戦格闘ゲーム(以下、格ゲー)」というジャンルの魅力についてです。

ゲームセンターに行ったことがあっても、格ゲーをよくプレイするという方は少ないと思います。それどころか、ますますコンシューマー(※2)化が進み、ネットを介した対戦も比較的快適に行われるようになった今、格ゲーをよくプレイするような方でもゲームセンターにまで足を伸ばすことは少ないでしょう。
格ゲーをはじめとするビデオゲームの衰退はこのような文脈でコンシューマーゲームの進歩と反比例で語られることが多いです。そんなわけで、ゲームセンターはこれからの生き残りを考えて家でもプレイできるビデオゲームよりは、音楽ゲームやメダルゲーム、プリクラといったような、ゲームセンターならではのゲームに力を入れざるをえないというわけです。もちろん音楽ゲームなどの場合には、専用のコントローラーまで付属したコンシューマー版も存在します。しかし、音楽ゲームだけのためにセッティングされた筐体でプレイするのとは快適度が天地の差です。大型筐体の流れでいえば「ガンスリンガーストラトス」なんかが目新しいタイトルでしょうか。残念ながら僕は三クレジットほどプレイして挫折しましたが。

本題に戻りましょう。先ほど例に挙げた音楽ゲームの場合には具体的に、専用筐体の存在、音響、画面との距離感、ボタンのセッティングなど、ゲームセンターでプレイすることに明確な利点があります。そんな中、家でもほぼ同じ(かそれ以上の※3)ゲームがプレイできる格ゲーを、なぜわざわざゲームセンターに行ってプレイするのか、ということです。
なんといってもやはり、一つ筐体を挟んだ向こうに対戦相手がいる、少し筐体の向こうを覗けば相手の顔がわかる、という臨場感でしょうか。これがたまりません。そこには、画面内の「このプレイヤー」ではなく筐体向こうの「あの人」に勝ったのだという快感が常につきまとうのです。勝利の瞬間に鳥肌が立ったことも一度や二度ではありません。
しかしながら、逆もまたしかり。負けたときの悔しさといったらコンシューマー版でネット対戦をしている時の比ではないのです。あまりに悔しかったのか、負けた人が筐体を叩く、蹴るなどのいわゆる台パン・台蹴り行為をしているのを見たこともあります。恥ずかしい話ですが僕自身、頭に血がのぼって何度も対戦を挑んだあげく、散財したことがないわけではありません。
もちろんこれらは褒められた行為ではないですが、それでも形はどうあれ、これだけの極端な感情を得られるのはひとえにゲームセンターという「場」の効果だと思うのです。

また、1プレイごとに100円玉を入れなければならないというのも、勝敗につきまとう快感や悔恨を増進しているのではないかと思うわけです。
勝てばそのまま居座ってプレイできるのですから、100円でより長く楽しめるわけですが、負けた時はもう一度100円を投入しなければプレイできません。当たり前ですね。とはいえ、単純なように見えてここには様々な葛藤が隠れています。
格ゲーにある程度のめり込んだことがある方ならわかるでしょうか。手持ちの100円玉が尽き、1000円札を両替せんとする時のあの苦悩。使うかどうかはともかく両替をするだけなのに、それだけでどこか負けた気がするのです。
しかし、もう一度戦いたい、あそこをもうちょっと工夫すれば勝てるはずだ、自分があの人より弱いわけがない、等々……思いをめぐらせた結果、つい両替という選択肢をとってしまうわけです。

そんな葛藤があっても、ついついやってしまうのは中毒性があるということなのでしょうが、ギャンブルをやるよりかよっぽど健全に「勝負」を楽しめるのは間違いないです。
ゲームセンターでしか味わえないであろう「あの」雰囲気をなんとか文章にまとめられないかと試行錯誤しましたが、やはり十全に理解するには実際に体験するのが一番だと思います。最初はプレイせずに後ろから見学しているだけでもいいですし、いきなり対人戦に挑むのだってけして悪いことではありません。そこでボロボロに負けるのもいい経験になるでしょう(ポッと出のルーキーが勝てるほど格ゲーは甘くありません)。負けたときに「もういいや、こんなんで100円すり減らすなんてアホらし」と思うなら、おうちでぬくぬくとRPGでもプレイしましょう。誰も文句は言いません。しかし、「悔しい、あの相手に勝てるようになりたい」と奮起するのなら、あなたはこの先格ゲーをプレイすることで様々な快感や絶望を得ることができるでしょう。

これを読んでいるあなたも100円玉を(10枚くらい)握りしめ、ほかでは絶対に得られないような刺激を求めてゲームセンターへ行ってみませんか?





※1 ここでいうビデオゲームというのにはシューティングゲームやアクションゲームから、果ては脱衣麻雀なんかも含みます。

※2 コンシューマー版とは、P○3やら、Wi○やらNi○ten○o D○のような家庭用機で発売されているバージョンのことです。

※3 というのも、コンシューマー版にはアーケード版には存在しないストーリーモードやトレーニングモードがあったり、場合によっては新キャラが追加されていることもあるのです。



(卯木諒太郎)
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