マンチキンという言葉をご存じだろうか。英語で書くとMunchkin。Man chickenではない。それはただの鳥人間であり、桂ぁぁ今何キロ!?でドボォの方だ。あれ2011年でしたっけね。ネタが古くて申し訳ない。さて、それでマンチキンなのだが、目的の達成にこだわり、自分に有利な言動ばかりするプレイヤーを指す言葉だ。おおかたRPGをプレイしているときに限って使われる隠語のようなものと思っていい。こう書くとどうしようもなくイヤなやつらのように思えるが、ゲーム好きなら誰しもマンチキンな部分はあろう。いやある。所詮この世は弱肉強食。今までずっと一緒の朋友だと思っていたソウルメイトだって次の日には恋人つくって目の前でイチャイチャしていたり内定決めて一足先に社会に飛び立っていたりするかもしれないのだ。現実社会でさえそうなのだからゲームでだってマンチキンになったっていいじゃないか。うかうかしてはいられない。そもそも最初から否定するつもりはないが、ともかく、そんなマンチキン症候群な私が今回紹介するのは、Steve Jackson Gamesからそのものズバリ「マンチキン 」というボードゲームである。
このゲームでプレイヤーはダンジョンである地下迷宮に潜りモンスターと戦って宝物を手に入れ、自分のキャラクターのレベルアップを目指す。モンスターを倒し手に入れた宝物を売り、経験値を得て最も早く10レベルに達したプレイヤーが勝利する対戦ゲームだ。ダンジョンの奥に眠るドラゴンを協力して倒すような類いのものではない。ルールの冒頭にはこうある。「『マンチキン』は、ダンジョン探索の神髄を体験させてくれる悪趣味なパロディ・ゲームです」と。何かがおかしい。ゲームに使用するカードにはダンジョンカードと宝物カードがあり、プレイヤーは手番になったらダンジョンカードを捲りダンジョンを進む。それがモンスターであれば戦闘。勝てばレベルアップし宝物カードを獲得、負ければレベルは没収。戦闘の勝敗はレベルの比較で決まり、プレイヤーの装備のボーナスとレベルを足してモンスターのレベルを上回ればよい。勝てそうにない場合、他のプレイヤーに協力を仰ぐこともできるが、協力した見返りとして戦果の宝物カードを要求されるのは当たり前。断られるどころか戦うモンスターを強化するカードで戦闘に干渉されることまである。やはり何かがおかしい。 1レベルモンスターの《松葉杖ゴブリンLv1》も「頭がいい+5」「ばかでかい+10」「ものすごく怒った+5」「古代の+10」のすべてを使われたならばそれであるならば 《松葉杖ゴブリンLv31》となり到底太刀打ちできないモンスターに変貌する。やはり何かがおかしい。絵面はシュールだがマンチキンなプレイヤーはオシャレや見た目にこだわらないから関係ないのだ。誰かが冒険中に倒れてしまったらその装備品を皆で取り合うこともできる。「都合のいい計算間違い」で 2+2=22と強引に主張したり、「いかさまダイス」を 使ってダイスの出目を好きな出目にしたり、挙げ句盗賊になったと思いきや颯爽と他のプレイヤーを闇討ちしたりと、闇遊戯も真っ青どころか粛正の罰ゲームをしてくるだろうことは疑いようがない。一言で言ってしまえば、繰り返しになるが悪趣味だ。だからこそこのゲームの結果が尾を引いて仲が悪くなることもない。なぜならば、そう、ゲーム好きなら誰しもマンチキンな部分はあるからである。お礼状のことは説明するよりも実際にやってみたほうが早いだろう。
最後に本コラムはマンチキンを薦めているのではなく紹介しただけだということを留意されたし。
木村 諒士
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