時は戦国、群雄割拠数多のおっさんが引きめきあう時代。誰もが己の武力、知力、財力をもって電車の座席を得ようと必死になっている。世はまさに「大席取り時代」。
かくいう私もeveryday着席の覇道を志す一兵卒。大学に入学して以来、毎日揺れに揺られて1時間、座ラー歴6年のヘビーユーザーである。
扉が開くと同時に左右の座席をチェック、空いている席への最短ルートを構築し、鍛えに鍛えた足腰が真価を発揮する。むしろ席に座るために鍛えたといっても過言ではない。数多の攻撃をその身に受けながらも立ち止まることはない。扉から座席までの約2m、この空間で俺に勝てるものはいないと思っていた。専用の狩場は車両番号5、扉番号2のスポット。ちなみに5月2日は俺の誕生日だ。そこでの勝率は4割3分。そこらの甘ちゃんには負けるはずがないと自負していたし、駅の誰もが私の俺 のことを認めていた、はずである。
しかし、社会は甘くなかった。大学入学と共同時に通学時間も変わり、相手取る座ラーの質が変わった。高校時代の主な相手は同じ高校生、また乗車時間は通勤ラッシュ後。しかし現在は通勤ラッシュド真ん中。奥歯を噛みしめ、涙を殺し屈辱に耐えながら通学することが増えた。所詮は地球人最強、戦闘民族であるサイヤ人には勝てはずもなかった……。座れない日々が続く。
私は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の座ラーを除かなければならぬと決意した。私には必勝法が分からぬ。私は、田舎村の座ラーである。
あのふわふわとした心地の良い通学時間を忘れることができるであろうか。断じて否である!周りの人より劣る体つき、まして特急に乗る財力すらない。私に残されたのは考えることのみ、嘗ての安寧を取り戻すために研究に研究を重ねている。
通勤ラッシュ時の主な乗客はサラリーマン、学生、おっちゃん、の3タイプのポケモ…、人間に分けられる。やはりキーポイントは学生さんである。学生さんはデメリットとして集団が多い、五月蠅い方もややいるなど多少あるが、その分メリットは大きい。学生さんは比較的学校近い方が多いので初めから座らないか、座ってもすぐに立つのでまさに「電車界のアイドル」ぜひ近くにいたときはワンチャン狙っていきたい。
スポーツであろうが美術であろうが、はたまた料理であっても練習は欠かせない。では座ラーは?「座ラーには練習方法はないの」、「もっと座れるようになりたい」そんな投書が自分のもとには日々何百件と来る(勿論嘘です)。座ラーの練習法と言えばイメトレが考えられる基本だ。並ぶ場所、人数、電車の構造、空いてる座席の数、考えられるパターンは無限大。これほどまでに奥が深いスポーツをほかにはないだろう知りません。 そろそろオリンピックの種目になるような気がするらないかなと日々考えています。
座ラーは一見無秩序の戦いに見える。誰もが自分の欲望を丸出しにして空席を目指し、立ちそうな人を血眼になって探し陣取る。しかし、我々には一つの掟がある。それは、優先席の存在である。古い格言に「優先席は申請神聖にして犯すべからず」とある。是非とも皆様には座ラーを誤解しないでいただきたい。我々は自分の着席にプライドを持っているのだ。
果たして通勤ラッシュを勝ち抜くことができるのでしょうか。
俺たちの戦いはこれからだ!ご愛読ありがとうございました!
安原 一輝
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