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リッこら

Re:ALL製作委員会は一枚岩ではありません。日々委員どうしが小首を傾げ合いながら 冊子を作っています。彼らは一枚岩というよりはむしろ、ガラクタの山のようです。どんなガラクタが埋まっているのか。とにかく委員それぞれが好きなものを書きたいということで始めたコラム、気が向いたら読んでやって下さい。ひょっとしたら、使えるガラクタがあるかもしれません。

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そこに在るべくして在る時間、居るべくして居る人

屈託のない青春像、知らず知らずのうちに追っちゃっていませんか?どーも、追っちゃってる人こと植田です。毎朝6時半に起きて駆け足で最寄駅に向かっていく生活から離れて約一年。夜の世界の楽しさ(in my room)を知り、「あれ?夜中に映画観たり本読んだりするのってすっごい有意義じゃん!」の精神に貫かれた生活を送りがちになっている2015年初夏でありますが、ときどき「もし高校生活がもう一年あったらどうなってたんだろう」と考えてしまいます。もちろん、生活習慣というのは周りの環境によって左右されますから、もう一年高校生活が伸びていても早起きであったとは思います。しかし増えた一年で何が起こっていたでしょう、仮に今の大学一年生の奔放さで高校をもう一年過ごしていたらヤンクミが何人出動しなければならなかったでしょうか。
 いろんな妄想が広がりますが、事実僕は大学生であり良くも悪くも戻れない過去として、思い出すことしか許してくれない過去として高校生活は僕の記憶の中に存在しているのです。嫌だったこともつらかったこともあったはずなのに都合よく、部分的に軽くモザイクを入れた具合に美化されてしまう。辞書で引いた意味のまんまの懐古主義です。
 ところで青春モノと呼ばれる作品群の中には高い確率で「女の子」が登場します。それもとびっきり可愛くて、物憂げな一面も少しあって、もう無敵なカンジの。ベースボールベアーや岡村靖幸の曲にも夏目漱石や武者小路実篤の作品にも。各時代のアイドルグループだって結局変態的な男子の願いを叶えるという側面で機能している部分もあると思います。
 それっぽいドラマチック展開で付き合うことが高校生の中で美しいとされているのなら、そんな高校生の美しい流れにきれいな形で乗った石井君に登場していただきたく思います。彼は僕が大学に入ってすぐ知り合った語学のクラスが一緒の友人なのですが、僕たちが知り合う少し前に高校のクラスメイトと付き合ったそうです。そのクラスメイトはもともと別に好きな人がいて、石井君はそもそもはそのことについての相談役として話していたそうなのですが、親身に話を聞いてくれる彼に惹かれたのか付き合いはじめたそうです。登場してもらって早々、申し訳ないとは思っているのですが彼が別れてしまったことをお伝えします。一年経ったか経たないかくらいだったそうです。僕は彼と一年一緒に過ごしてきて、彼が授業の中で観た『猟奇的な彼女』の後半部分、女子勢の感涙レースでフライングさながら、誰よりも早く嗚咽を漏らして泣き始めるほど感受性が鋭く、涙腺が弱いことを知っていたので、また、たびたび彼との会話の中でナチュラルに彼女の話が出てくるので、これから彼がどれほど悲しむんだろう、大丈夫かなあと思っていたのですがその別れた、という報告をされた後はその一部始終を意外にも淡々と他人事のように語っているので少し安心しました。ただ、そのあとの会話の中で一つだけ気になったのが「もう近くにいる人が離れて行ってしまうのが怖い」という言葉です。直接彼のこの言葉を耳にしたとき、それはとんでもなく現実性を帯びたものとして僕の頭の中に入ってきました。
大学生になった今まで僕たちは何らかの形で誰かに別れを告げたり、告げられたり、告げあったりしてきました。もしかしたら「サヨナラ」という言葉すらなく、つながりをいきなり断ち切られるような別れをした方もいるかもしれません。吉本ばななの『キッチン』には死というかたちで別れが登場してきますし、サン=テグジュペリの『星の王子さま』には旅をする必然として別れが出てきます。世に遍く存在している別れは何かしらの意味を持ちうるものです。石井君は怖いという感情でそれを捉え、僕はそれに深く共感しました。
 モラトリアムまっただ中、今から大学を卒業するまでにどんな別れがあるかは予知できません。振り返ってやっと掴めたような気になる、大人という像。本当にあるかどうかすらわからない大人になりたくて、コーヒーばかり飲んでよくおなかを壊していた高校生だった僕はいつもよりは元気のない石井君にこれからの物事が全てうまくいくような言葉をかけてあげることもできずに、ただ一緒になんとなく座っていました。

 植田康平
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