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リッこら

Re:ALL製作委員会は一枚岩ではありません。日々委員どうしが小首を傾げ合いながら 冊子を作っています。彼らは一枚岩というよりはむしろ、ガラクタの山のようです。どんなガラクタが埋まっているのか。とにかく委員それぞれが好きなものを書きたいということで始めたコラム、気が向いたら読んでやって下さい。ひょっとしたら、使えるガラクタがあるかもしれません。

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心臓から母親、紅さ

生々しい夢を見た。私は手を前に差し出して、どくどく脈打つ心臓を受け取った。ただ、それだけの夢。起きた時、変な汗をびっしょりかいていた。寝る直前に金曜ロードショーの寄生獣を見たのがまずかった。ミギーはかわいいけど、ただただ気持ち悪さだけが後を引いたらしい。

気になったので「心臓の夢見」についてGoogle先生に尋ねてみた。なんでも、内臓に関する夢は病気、財産、家族、内面などの象徴だという。内臓を治療したり手術したりする夢は、身体や精神的な病気と闘っていることを示し、内臓を洗う夢は、洗っている内臓に問題を抱え、回復させたいという願いを暗示しているらしい。まず内臓を洗う、という想像ができるだけで天才だと思うのだが。

「身体の外側にある内臓の夢」がなかなかアツかった。「取り出す」か「取り出される」かの違いで意味が大きく異なる。心臓を取り出す、または食べる夢は、親密な関係を暗示する。一方、心臓を取り出される、もしくは止まる夢は、トラブルに巻き込まれて事故に遭うことを警告する夢だそう。私の夢はたぶん後者だろう。わが身に危険が及んだ際、神さまのご加護があるようにと「一日一善」をモットーに日々つつましく暮らしているが、一善どころか十善でも危険そうで怖い。そうか、丸善か。なるほど。

言わずもがな、命を削る上で大切な器官である「心臓」。そんな「心臓」の意味を持つ世界中の言葉は、さまざまな意味を兼ね備えている場合が多い。例えば、江國香織、辻仁成による二冊構成の恋愛小説「冷静と情熱のあいだ」のイタリア語訳は「Calmi Cuori Appasionati」。順に、冷静、心、情熱という意味である(注1)。そして「Cuori」には、心とは別に「思い遣り」という意味もある。タイトルの中に冷静と情熱の間にあるべき存在を忍ばせている。物語の舞台である、イタリアの言葉で。

スペイン語もまた然り。心臓はスペイン語で「Corazón」という。某海賊漫画のファンにとっては非常にタイムリーな名前であり、この名前を涙なしに目にすることはできないだろう(筆者の主観)。意味は身体器官の心臓、トランプのハート、揺れ動く感情。口を開いてしまうときりがないが、尾田さんの伏線回収の上手さが際立つ命名なのだ(筆者の主観)。

英語の「心臓」は「heart」。「To eat one's heart out」という語句がある。直訳すると「心臓を食べる」。この語句は、あることわざを表している。

晋の武将桓温が船で蜀に攻め入ろうとして三峡を渡ったとき、その従者が猿の子を捕らえて船に乗せた。母親の猿は泣き悲しみ、連れ去られた子猿の後を百余里あまりも追った。ついに母猿は船に飛び移ったが、そのままもだえ死んでしまった。母猿のはらわたを割いてみると、腸がずたずたにちぎれていた。

『世説新語・黜免』の故事の一つ。あることわざとは「断腸の思い」。それを英語では「心臓を食べられた」と表現する(注2)。夢見の内容と重なる部分があるのは偶然にしても、母猿の身体を駆け巡る感情の激しさが痛いほどに伝わる意訳であろう。この世で、この世界で、最も尊いもの。もちろんそれは、カリフォルニアオレンジジュースであったり、ふくらはぎの筋肉であったり、人それぞれだろう。私は、それがお金と母親から貰い受けた愛情だと思っている。この母猿の死に様からもわかるだろう。母の愛とはなんと深く、絶対的なものか。

絶対的。この言葉がするりと吐息のように出てくるのは、ビルの上から等加速度運動している人か、冷たい海にまっすぐ進んでいける人か、錦糸町駅ホームから迷いのない目で線路を眺める人くらいだろう。苦痛をものともせず、脈打つ心臓を投げ出す覚悟を持ってしまった人。それでも、黙っていても何かしら流動していくこの世界で、母の愛は絶対的だと思う。知識も、能力も、髪も眉毛もない涎まみれの赤ん坊にとって、それは奇跡的に確かな指針である。

初めて酸素を体内に取り入れたとき既に、体には紅い血が流れていた。同時にあたたかい何かに包まれていた。血流の物理的な温かさとは違う、目に見えない何か。そのあたたかさの影響なくして物事を捉えるのは不可能だと思う。世界中のどの国でも、どの哺乳類でも、どの花にも、母親から分け与えられた血(らしい存在)、その流れを伝う愛があるはず。

だから体中を巡る血は紅く、巡り巡った血が辿り着く心臓もきっと紅く、たぶん、愛情も紅い。紅さの輪ですべて繋がっている。母の日のカーネーション、買いに行かなきゃ。

(注1)気ままなひとこと(http://blog.goo.ne.jp/shikohra/e/4fd3922268f59be3587a0049305ada95
(注2)断腸の思い‐故事ことわざ辞典(http://kotowaza-allguide.com/ta/dantyounoomoi.html
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