私の部屋から一軒の家が見える。その家は、とても充実した庭を持っている。
春は あちこちで何かの芽が吹いているのを確認できる。草木の色はまだ若々しい緑で、陽があたると一気に晴れやかになる。夏は毎日庭の様子を見なければ、たちまち草が伸び放題に広がるだろう。庭には小さな金魚鉢があって、2,3匹の金魚が泳いでいる。家で飼っている犬が走り回っているのを見ることもある。秋になると 花々は消え、かわって葉が色を変える。石榴や大きいレモンのような果実もなる。この時期になるとだんだん、草が夏に生い茂っていた分、枯れた庭が広く感じるようになる。冬が来ると、草木はじっと耐え忍ぶ。庭は静かになる。犬ももう出てこない。ただ竹だけは、いつまでも緑でいる。
私はこの庭を気に入っている。中でも初夏と晩秋の時期は目がいってしまう。
今(12月の始め)はちょうどその時期だ。この季節は庭のもみじが紅葉する。その紅葉が、もう目を奪うような華麗な色なのである。全くの赤だ。爆発的に燃えた火が色をつけたのか、人工でこんな赤が作れるだろうかと思うくらいの真っ赤だ。きっとこの木は11月下旬から12月初旬の、今この時期が旬なのだろうと感じる。これだけ見事なに染まる 木は、紅葉狩りで有名な観光名所に行ったってちょっとお目にかかれまい。晴れた日にこの木の下を通ると(庭は塀に囲まれているが、この木は枝が飛び出している)、日の光が葉を突き抜けて、柔らかな赤い光が降り注ぐ。私の想定をはるかに超えて、自然は美しい。
紅葉はもうすぐピークを迎えるだろう。そしてあと1,2週間もすれば葉は落ちてしまうだろう。こんなにも美しく染まった葉を、惜しみなく自然は散らしてゆく。もちろんこの紅葉にいちいち感動している人間がいることなど、自然は知らない。
PR